安房ルネッサンス・今西さん訪問記

今西さん宅は嶺岡山系南斜面の古民家。夫婦とお子さんの3人暮らしをしておられる。

T−今はどんな生活ですか?
I−2009年12月までは酪農ヘルパーの仕事をしていたのですが、正月からは新しい生活に入っています。

T−自給しておられるものは?
I−米は100%、200坪の田んぼで約4俵(240kg)。野菜も100%、150坪の畑で。
卵は300%(^^)、12羽が1日約10個生むので、多少現金収入になっていますが。
えさは、くず米、ひじきくず、鰹節くず、煮干くず、貝殻、砂、野菜くず、蛎殻などを与えています。味噌は100%自家製。醤油は友人たちで製造・自給しています。それと塩作りもしています。ざっと、食物の自給率は50%くらいかな〜。

T−最近、「地域自給組合あわのわ」を提案されたんですよね?何を自給するんですか?
I−まず食べ物から。米、小麦、塩、雑穀。1人で自給するより仲間で自給するほうが楽しいし。出来れば衣食住の自給、100%でなくても、出来る範囲でね。
現代人は、労働を金に買えて物を買う、この関係を変えたいのです。助け合いの仕組みです。セキュリティーにもなるしね。
現在、塩プロジェクト、小麦プロジェクト、雑穀プロジェクト、森林プロジェクトが立ち上がっています。
塩作りや小麦の種まきをやりました。何か自給したい人がプロジェクトを自由に立ち上げていけばいいと思っています。

I−「自給組合宣言」を書いてみたんです。これを見てもらうと考え方をざっと理解してもらえるかな。
「地域自給組合 あわのわ」―地域自給宣言―三つの輪(わ)
・「地域自給の輪」
「同じ地域に住む組合の賛同者が、ゆるやかに共同体として結ばれ、既存社会のように生産物や労働をいったん貨幣に換えてから自分に必要な送品を購入するという仕組みから少しでも離れ、お互いの顔の見えるところで生産もするし消費もする、可能な限りお金やモノの移動を少なくすることによって、われわれが労働から得たものが地域の外へ流出することを食い止め、それぞれの生活が豊かに幸せになることを目指します。

・「多様性の輪」
組合員の生産したいもの、労働したいことを他の組合員に呼びかけ、参加希望者を集め、プロジェクトチームを作り、その中で生産方法、販売方法(円、アワマネー、物々交換などの選択)、生産にかかる経費の調達、労働の方法などを、各プロジェクトごとに運営し、よりよい方法を組合全体に還元していきます。各自、各チームがひとつの輪(生命)として存在し、そして他の輪とつながり、組合全体の輪を形成し、中央集権的なトップダウンではなく、ボトムアップの組織を目指します。

・「持続可能な輪」
食品・農産物においては出来るだけ無農薬、無化学肥料、無添加を目指し楽しく働く場を作ることによって、資源を浪費したり、自分たちの心身を過剰に疲労させることのない人と人、人と自然の連なりを基礎とした持続可能な生活、社会を目指します。

T−「地域自給組合あわのわ」を提案された動機は?
I−もともとは、里山・里海研究会の意見交換の中で出てきた話なのです。酪農ヘルパーアルバイトの生活はつまんなかったので、里山や里海を生活の糧に出来ないか、木材の伐採や海草などで収入を得ることは出来ないか、そんな話をしていたとき地域自給のアイディアが沸いてきたのです。

T−里山・里海研究会でやろうとしていることは?
I−里山生活お助け隊という組織を立ち上げています。福祉と環境をうたい文句にした便利屋みたいなもんかな。具体的には、休耕地、放棄地を再生し、作物を栽培したり、雑草を刈って堆肥にし、地域自給組合の畑にいれるとか。ユズや柑橘類を加工できるところまでもっていければいいね。地域の高齢者の家での草刈や生活上の手助けなども出来るんじゃないかな。人とものが循環できるシステムができるといいね。
若い移住者が勤めに行かなくても生活できる受け皿が出来ればね。僕も里山・里海研究会や地域自給組合の中での仕事で生活費を稼ぎたいし。みんながみんな東京を向いていたらしょうがないからね。
地方がいつも東京のほうへ向いているという関係を止めたいんです。



T−鴨川に移住されたのはいつごろですか?動機は?
I−20年ほど前、26歳のときです。学生時代、クラシック系のミュジッシャンになりたかったんです。でも生まれ育ったものと西洋の伝統的音楽との間の違和感が膨らんできたんですね。田舎で畑を耕したかった。自然回帰ですね。友人の宮下君が鴨川に空家があるというので、彼らと一緒に引っ越してきたんです。

T−鴨川9条の会設立を呼びかけていますね?
I−自分の子供とかが将来戦争に行って殺したり、殺されたりしないように。徴兵制にならなくても、戦争に向かっていきそうなので。防衛大臣が武器輸出してもいいとか言っていますよね。日本人はわ〜と行っちゃうからね。バブルのときもわ〜と行っちゃった。危険な習性だね。大きな流れに流されてしまう。経済が好くなることを重視する流れを止められないように。ちゃんと自分の考えを話す訓練を受けていないからね。
若い人たちは、論理的・分析的に考えることで正解が生まれるとは思っていないようだ。感情的で、痛みから逃げてしまうところがある。現代人の特長かな。
もっとも、私としては論理も感情もどちらも正解とは思いませんけどね

現在は敵・味方が混沌としていて、分けられない。そういう状況に無感覚になり、鈍感になってしまっている。もっと摩擦を感じて生きていいと思う。自分でものごとを考え、考えたことを、学校や家庭や社会でしゃべっていく世の中になっていかにゃね。
学校や家庭で、自分で考えるということをさせないでいるということが問題だと思います。

T−特に影響を受けた人は?
I−自然農法の福岡正信さんが一番。「わら一本の革命」とか。田んぼや畑の基本です。
でも、福岡さんが特別大きな一人ではありません。ほんとの師匠だと思える人が自分にはいません。それってとてもよくないことですよね!

それと野口整体。今、月に1度不定期ですが、鴨川で「活元会」をやっています。
月2回東京の道場へ通っています。野口整体の目指すものは「全生」。自分の生を全うすることなのです。健康こそ自給しなくては!

T−ありがとうございました。